かつては小さな店であったここも、今やかぶき町で1、2を争うほどの有名店。お忍びで将軍が訪れたこともあるという、ここは・・・スナック『すまいる』。



「姉上・・・!」



そんな店には不釣合いな、しかしながら、一部の従業員には見慣れた青年が、少し慌て気味に店内へ入って来た。



「あら。どうしたの、新ちゃん?」

「あの・・・仕事中にすみません・・・。銀さん、見ませんでしたか?」

「銀さん?ここには来てないけど・・・。」

「そうですか・・・。」

「どうかしたの?」

「次の依頼、面倒そうだからって、僕らに任せようとしてるんですッ!それで、どこかへ逃げてしまったみたいで・・・。」

「まあ、そうなの。・・・それじゃあ、もしここに銀さんが来たら、引き止めておくわね?」

「本当ですか?!ありがとうございます、姉上!!では、僕は他の所も当たって来ます!」

「無理しないでね、新ちゃん?」

「はい!姉上の方こそ、無理しないでくださいね?それでは!」



入って来たとき同様、彼はまた急ぎ足で店を後にした。
それを彼の姉――お妙の隣で見ていた1人の従業員が不思議そうに訊ねた。それもそのはず。彼女は最近この店で働くようになったばかりで、お妙の弟のことなど何も知らなかったのだ。



「今のは・・・・・・弟さん、なんですか?」

「ええ。」

「優しそうで、とても素敵な弟さんですね。」

「ありがとう。」

「いえいえ、思ったことを言ったまで、です。ちなみに弟さんの御名前・・・訊いてもいいですか?」

「新ちゃん。志村新八よ。」

「新八くん、ですか・・・。また遊びに来てくれるといいですね!」

「ありがとう、ちゃん。新ちゃんにもそう伝えておくわ。」



そんな新人であるにとって、新八の第一印象はとても良いものとなった。








「――ということがあったのよ。」



店から帰ると、お妙は弟の新八に昨日の出来事を報告した。



「姉上の隣に居た人が、ですか・・・?」

「そう。ちゃん、ね?」

さん・・・。」

「・・・そうだ、新ちゃん!今日はお客さんも少なそうだから、早速来てみない?」

「え・・・。いいんですか?」

「ええ!早い時間帯なら、新ちゃんが来ても大丈夫よ。」

「でも・・・。」

ちゃんだって、楽しみにしてるのよ?」

「・・・・・・では、お言葉に甘えて。」

「じゃ、今日は一緒に行きましょうか?」

「はい!」



自分を褒めていたと聞かされ、当然ながら、新八にとっても、の第一印象は良いものとなった。








一方、時は遡って、新八が訪れてから、およそ30分後・・・。スナック『すまいる』には、もう1人の訪問者があった。



「姐さん・・・!」



またしても、店内に慌しい声が入って来たのだ。今回もこの店の雰囲気とは違う人物で、全身ほぼ真っ黒の服を着ていた。
これは、江戸の治安を守っている(・・・はずである。時に、・・・いや、頻繁に破壊行動も見られるが・・・)特殊警察、真選組の制服である。



「・・・どうしました?」

「局長、来てませんか?」

「いえ、見てませんけど。」

「おかしいなァ・・・。ここだと思ったんだけど・・・。とにかく、ありがとうございました!もし局長を見かけたら、ウチまで通報お願いしまーす!それでは!」



彼もまた、誰かを探しにここへやって来たようだが、目的の人物が居ないとわかると、早々に立ち去ってしまった。



「・・・・・・今の方も弟さん?」

「いいえ。」

「あ、そうなんですか!すみません・・・。姉さん、って呼ばれていらっしゃったから・・・。」

「そうじゃないのよ、ちゃん。あの人たちは、近藤さんが率いてる、真選組の隊士だから。」

「・・・なるほど、近藤さん、ですか。」



新人とは言え、でも近藤の名は知っているようだった。その原因については・・・・・・言及しないでおこう。
心なしか、お妙の表情も、先程とは変わった気がする・・・・・・。



「そう。だから、私とは何の関係もないのよ・・・?」

「そ、そうですね・・・!それでは、さっきの方の御名前は知らないのですか?」

「・・・そうね〜・・・何だったかしら。いろいろ呼ばれていた気はするんだけど・・・。ちょっと影が薄いから・・・。」

「そうなんですか・・・。それでは、また、次いらっしゃったときに、自分で訊いておきます。」

「あら。そんなに気になったの?」

「ええ、とても楽しそうな方だと思ったので。」

「・・・そう。」



お妙は納得していないようだが、にとっては、この影の薄い隊員の第一印象も良いものであった。








「――ということがあったぞ、山崎!」



そのことを真選組局長である近藤が、監察方の山崎へと伝えた。



「ていうか、なんで、そのことを知ってんですか?!やっぱり、昨日はあの店に居たんじゃないですか!!」

「それはアレだ。・・・気にするな。」

「気にしますよ!!しかも、俺、影薄い扱いされてるし・・・・・・。」

「いいだろ。監察方には持って来いだ。」

「で、でも!その、さんって人は、俺のことを楽しそうって言ってくれたんですよね?!」

「そうだぞ。さんはなァ、お妙さんとは違った魅力がある人で、な。最近入って来たばかりなんだが、既に彼女を気に入っている客が何人も居るみたいだ。」

「だから、どうして局長がそんなことを知ってんですか・・・?!」

「とにかく、だ。今日、早速行ってあげたらどうだ?・・・なに、俺もついて行くから安心しろ。」

「アンタが行きたいだけじゃないですか?!」

「じゃ、行かないのか、山崎?」

「い、・・・行きます・・・・・・。」



そして、山崎にとっても、自分を認めてくれたの第一印象は良いものとなった。









Next →



 

『銀魂』第2弾、かつ『銀魂』初のVS夢で、まさかの組合せ!(笑)
「『銀魂』では、山崎さんが好き」という友人にも、「それって・・・需要ないんちゃう??」と言われてしまいましたっ!(汗)
いいんです!需要が少ないものこそ、書く価値があるんです!!
・・・・・・と言うか、少なくはないと思うんですけどねー。どうなんでしょう?(笑)

個人的には、この2人が大好きでして。特に、この2人が仲良く喋っているところとか、好きなんですよねー。でも、ちょっと対抗心を燃やしてる感じも好きでして。
なので、VS夢です!!(笑)本当、書き慣れてない上に、後編に続いちゃってますが・・・。できれば、続きも付き合っていただけると、大変嬉しいです!

('10/01/14)